2014年に世界で最も権威あるワインアワードを
日本のワイナリーで初めて受賞。
その後も6年連続で受賞し、
2020年にはコンペティションを卒業した今、
三澤さんが大切にしていることとは?
――ワイン醸造家になろうと思ったきっかけを教えてください。
生まれも育ちも山梨で、実家は大正時代から続く家族経営のワイナリー。幼い頃からブドウ畑や樽が並ぶ醸造所が遊び場でした。そこでずっと目にしていたのが「地元の甲州種で作ったワインを世界に誇れるものに」と、奮闘する祖父や父の姿です。
1990年代、世間ではワインブームが沸き起こりましたが、対象となるのはフランスなどの高級ワイン。日本産ワインは二流だとか、甲州はワインに合わないだとか、さんざん言われていたんです。そうした世間の声に屈せず、世界を目指す父たちを間近に見ているうちに、ワイン造りに興味を持ち始めました。
――三澤さんは世界各国でワイン造りを学ばれたんですよね?
世界に誇れるワインを造るには、まず良いブドウを栽培する必要があります。どうやって日本固有の品種である甲州の質を上げていくか。頭の中はそのことでいっぱいでした。
フランスなどの伝統国で勉強をした後、興味を持ったのが南アフリカなど、ワイン新興国で取り入れられている栽培方法でした。日本での醸造がひと段落すると、南半球のワイナリーに雇ってもらい、実際に働きながら甲州種に合った栽培方法を模索していました。
その後、日本では一般的だった棚栽培から垣根栽培に変え、水はけをよくするために高畝式を取り入れるなどし、一からブドウ栽培を始めたんです。
良質なワイン造りに必要とされる20度以上の糖度を目指し、試行錯誤を重ねること6年、2012年にようやく糖度20度を超える果実ができました。そして翌2013年に、これまでの甲州とは違った粒が小さくて、糖度が高い面白い房がみつかるようになり、もしかしたらすごく個性的なワインになるのではないかと思いました。
収穫後は、気温が高いときは扇風機を当て、寒くなったら毛布でくるんで温度調整。まるで赤ん坊を育てるみたいに(笑)。そして2014年に“デキャンター・ワールド・ワイン・アワード”(以下DWWA)の金賞を受賞することができました。
――醸造家の道に進み、世界的な賞を獲得するまでのお話しを伺いましたが、「プラチナ・メダル」にちなんで、三澤さんにとって自分に“最上級の栄誉”を贈りたくなる、自らを褒め称えたくなるような成果・成功とはどんなことでしょうか?
それはスパークリングワインかもしれません。スパークリングは、父に作ることを反対されていたんです。スパークリングでは甲州を使用していないのですが、2016年に甲州とスパークリングの両方でDWWAのプラチナ賞をとることができました。
スパークリングは、シャンパーニュ地方以外のワイナリーは賞を取りにくいカテゴリーと言われています。金賞の上にプラチナ賞が出来たそのタイミングで、アジアでは今でもどこもとっていない同カテゴリーのプラチナ賞をとれたことは、最上級の栄誉です。
また、2019年にアメリカ大手通信社ブルームバーグが選ぶ“世界TOP10ワイン”に入ったことも、かつて留学中にあこがれていたワイナリーとグレイスワインが肩を並べていることがびっくりというか、感慨深いものがありました。
20年前は3カ国でしか取り扱われていなかった私たちのワインが、今では20カ国近くで飲まれるように。祖父や父たちが続けてきた努力がようやく実を結んだように思います。
――仕事をする上で特に大切にしていること、今後の目標などを教えてください。
2014年以降6年間連続で、金賞、プラチナ賞をいただき、実は2020年にコンクールは卒業しました。評価も大切ですが、お客さまが幸せを感じるような、美味しいだけでなく喜びを与えられるようなワインを作りたいとずっと思っていたので、いつかは区切りをつけようと思っていました。
通販などでワインを購入してくださったお客さまに、「このワインを手にしてくださってありがとうございます」だったり、購入履歴を見て「前回のワインはいかがでしたか?」など、簡単な言葉だけれど、手書きのメッセージを添えています。お手紙でお返事を頂くこともあるんです。そうしたお客さまとの交流を今まで以上に大切にしていきたいです。
――三澤さんのパーソナルな部分についても少し伺えればと思います。“最上級の栄誉”とは対照的に、ご自身にとっての、日常の“ささやかなご褒美”といえばどんなことでしょうか?
収穫などの繁忙期にあたる8月~11月の4カ月間はゆっくりと寝ることもできないような生活が続きます。
それだけに、好きなクラシック音楽を聴きながらワインを飲んだり、お風呂にゆったりと入るような、ちょっとしたひとときに幸せを感じます。
――改めて「グレイスワイン」の特徴はどんなところでしょうか?
ものづくりと誠実に向き合うところから生まれる、果実のピュアな味わいを楽しめるところでしょうか。
私たちのワイナリー「グレイスワイン」のキーワードは、“ピュア、エレガント、オーセンティック(正統)”。繊細でエレガントな味わい、そして王道でクラシカルなワインを踏襲している正統スタイルの醸造方法がその特徴です。貴金属の最高峰であるプラチナにも似ているところがありますよね。
――2020年のワインの出来はいかがでしょうか?
長梅雨の影響で一時はブドウの出来栄えを心配したのですが、その後は好天に恵まれて順調に生育し、思っていた以上に質のよいブドウができました。きっと最高のワインに仕上がると思います。
――最後に、読者の方にメッセージと、甲州ワインをより味わえるおすすめの飲み方がありましたら教えてください。
お鍋や日本料理など、お出汁の風合いにも合うのが甲州ワインの魅力。ふきのとうやタラの芽といった春野菜の天ぷらなどに合わせるのもおすすめです。日常に優しく寄り添ってくれるワインなので、食卓で気兼ねなく飲んでみてください。
1923年に山梨で創業した中央葡萄酒グレイスワイン4代目社主の長女。ボルドー大学醸造学部、ステレンボッシュ大学院に留学後、オーストラリア、ニュージーランド、チリ、アルゼンチンのワイナリーで研鑽を積む。2008年より、グレイスワイン栽培醸造責任者。
2014年「Decanter World Wine Awards」にて、日本ワイン初の金賞を受賞。
著書に『日本のワインで奇跡を起こす 山梨のブドウ「甲州」が世界の頂点をつかむまで』(ダイヤモンド社)や、読売新聞山梨版で『ワイン歳時記』を連載中。
山梨県甲州市勝沼町等々力173
https://www.grace-wine.com/※2021年1月取材
プラチナ・ジュエリーの国際的広報機関プラチナ・ギルド・インターナショナルが、貴金属の最高峰であるプラチナを500 グラム以上も使用して製作した特別な宝飾メダルです。
素材 | Pt999(純プラチナ) |
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総重量 | 565.84グラム (留金具2個含む、リボン別) |
サイズ | 直径 880 ミリ、厚さ 6 ミリ |
参考価格 | 約 1000 万円(非売品) |
素材: Pt999(純プラチナ)
総重量: 565.84グラム (留金具2個含む、リボン別)
サイズ: 直径 880ミリ、厚さ 6ミリ
参考価格:約1000 万円(非売品)