
それぞれの分野で道を切り拓き、
次の時代を見つめる人たちがいます。
時を超えて輝き続けるプラチナ・ジュエリーのように、
しなやかに、
そして芯を持って未来を描くその手には、
どんな光が宿っているのでしょうか——。
プラチナ・ギルド・インターナショナルは、
今年設立50周年を迎えました。
次の時代に向けて——
未来を創る方々の言葉から、その光を探ります。
音楽制作やライブ、DJ活動に加え、
国内外の大学や専門学校の教壇にも立つ
鶴田さくらさんにお話を聞きました。

―― 現在の音楽制作やライブ、DJなどの活動をされていますが、もともとはアメリカの大学で、音楽療法について学ばれていたんですよね。
音楽療法を専攻し、科学的な視点から音が人に与える影響を学んでいました。音の周波数、リズム、呼吸、心拍が人の感情にどのように作用するのかを理解する中で、楽曲制作は「心地よさ」だけでは不十分だと気づいたんです。
そこからは「身体や心に寄り添う音とは何か?」という問いを常に持ちながら、作品を作るようになりました。
また、音楽療法の現場では、相手の状態に耳を傾けながらイニシアチブを取ることが非常に重要です。現在のライブパフォーマンスやDJ、教育の場においても、観客や生徒の反応を繊細に感じ、その場に必要な音や空気感を判断する力が必要なので、そのときの経験が生かされていると思います。
音を通したコミュニケーション、そして人との対話としてのコミュニケーションの両面において、音楽療法での学びが役に立っていますし、今でもその価値を強く実感しています。

―― もともと幼少期にピアノをはじめ、電子音楽へと進まれた鶴田さん。表現手段に固執せず、時々の流れに柔軟に対応されてきたように思います。音楽に深く魅了されながらも、自由な創作を続けられている背景にはどのような理由があるのでしょうか?
一番の理由は、音楽が私にとって「帰る場所」を提供してくれたからだと思います。小さな頃から音楽は、自分と向き合うための手段であり、環境や気持ちの変化など人生のさまざまな波の中でも決して私を裏切ることなく、常に寄り添ってくれる存在でした。
特に電子音楽は、音の選び方ひとつで無限の景色が描けるという自由さがあり、特別なジャンルだと感じています。そうした音楽の持つ可能性が、自分の内面と対話するための環境を築いてくれた。音楽制作の時間が救いとなったからこそ、今も音楽表現を続けられているのだと思います。
―― 電子音楽の自由さに可能性を感じているとのことですが、「音楽とテクノロジー」が掛け合わさることで、どのような音楽が生まれるのでしょうか?
テクノロジーの普及はあらゆる分野に広がっていますが、音楽もその例外ではありません。特に電子音楽は、テクノロジーの発展と共にスタイル自体が進化してきた非常にユニークなジャンルです。
テクノロジーの発展により、音楽の作り方・聴かれ方・楽しみ方は常に変化してきましたし、これからも変わり続けるでしょう。そんな何通りもの正解があるスタイルに魅了されているのだと思います。
MIDIコントローラーを使い、即興で音を重ねて音楽をつくり上げていく
―― 鶴田さんの音楽にテクノロジーを取り入れた最初のきっかけは何だったのでしょうか?
きっかけは、20代後半に関わった音楽療法の現場での体験でした。普段はピアノやギターといった生楽器を使ったアクティビティを中心に行っていたのですが、ある日、私と同年代の患者さんと一緒に音楽を聴いていたときに、ヒップホップに非常に強く反応を示したんです。その方は話すことや自由に体を動かすことが難しかったのですが、ヒップホップの曲が流れると目をキラキラと輝かせ、明らかに違う反応をしてくれました。
「この人が心から楽しめる音楽体験を提供できないか」と考えたときに思いついたのが、MIDIコントローラーという電子楽器の使用でした。ボタンを一つ押すだけで音が出るというシンプルな仕組みなので、好きな音を自ら奏でることが可能になりました。
テクノロジーがもたらすアクセシビリティの力を目の当たりにした瞬間でした。テクノロジーの可能性や素晴らしさに触れ、もっと学びたいと思ったんです。そこからハードウェアのデザインやサウンド・シンセシス(音の合成)といった電子音楽にまつわる分野を学び直し、現在の活動へとつながっています。
―― テクノロジーによって、音楽表現の幅や、聴く人・演奏する人の可能性も広がるということですね。
そう思います。ピアノやギターなどの生楽器は、演奏技術の習得に時間や訓練が必要です。弾けるようになるまでのハードルが高い。でも、MIDIコントローラーなどの電子楽器を使えば、「音を鳴らして楽しむ」という体験がもっと簡単に、より直感的にできるようになる。演奏する楽しさをより多くの人に開くための、とても魅力的な手段だと思っています。
テクノロジーと音楽の融合によって、より自由で多様な表現が可能になる。その面白さを多くの人に届けたいと考え、電子楽器を取り入れたパフォーマンスや音楽制作を教える活動も行っています。

―― ここからは少しパーソナルな部分もお聞きできるとうれしいです。最近、髪型を変えられましたよね。また違う雰囲気で素敵です。なにか気持ちの変化があったのでしょうか?
「ちょっと変えてみようかな」と思っただけだったんですけど、変えてみたら不思議と、他のことも螺旋階段のように次々と変わっていったんですよね。
髪が短くなったことで、乾かす時間が減り、他のことに時間を回せるようになりました。髪が長かったときは自分の中にあるフェミニンな部分が前面に出ていた気がするのですが、ボブにしてからはマニッシュな一面も自然に表現できるようになりました。自分との向き合い方が、髪型ひとつで少し変わった気がしています。
髪が短いと顔まわりや耳元のシルエットが際立つので、アクセサリーの選び方も変わりましたね。左右対称のデザインのものや存在感のあるアクセサリーをつけることで、ステージ上での印象をより強くできたらと思っています。

―― 普段、ジュエリーはつけられますか?
よくつけますが、普段使いのものとステージに立つときのものとで使い分けています。特別な日にときめくジュエリーをつけることもあります。母から譲り受けた大切なアイテムがあるので、誕生日やクリスマスパーティーなどきらびやかな夜に、身につけています。
でも、日常的に特別なものを身につけることも好きです。たとえば結婚指輪の上に、自分で購入したリングを重ね付けしているのですが、それは頑張った時のご褒美として自分で買ったものなので、自分自身へのエンパワーメントという意味が込められているんです。もちろん結婚指輪の形や質感もとても気に入っていますし、ずっと身につけていたいものですが、自分の努力の証としてのリングを重ねることで、より自分らしさが出せる気がしています。
―― プラチナ・ジュエリーにどんなイメージを持っていますか?
日常のラグジュアリー感を底上げしてくれるようなイメージを持っています。そういえば、妹の卒業祝いにプラチナのピアスをプレゼントしたことがありました。節目の贈り物としてもらうジュエリーは、記憶にも残ると思うんですよね。私自身、母から譲り受けたジュエリーには思い出が詰まっています。妹の頑張った証として思い出に残ったらいいなと思い、奮発してプレゼントしたことを覚えています。
自分のためのプラチナ・ジュエリーであれば、「スタメンジュエリー」として活躍してくれるようなものを日常的に取り入れていきたいですね。


―― 新作アルバム『GEMZ』では天然石をモチーフにされたとのことですが、鶴田さんの創作のインスピレーションの源について教えてください。
インスピレーションの源泉はどこか1つに限定されているものではなく、内側と外側をフローする流動的なものだと考えています。内側から来るものでいうと自分の体調、感情、メンタルに向き合う時間などでしょうか。『GEMZ』では「再生」や「浄化」といったテーマに惹かれて、それが天然石の象徴的な意味や美しさに重なっていきました。
それぞれの石の背景が、天然石の中を覗いた時の万華鏡のように自分の体験や感情と重なって見えたんですよね。もともと視覚的な情報を音にするのが得意なので、ビジュアルの観点からも天然石はマッチしていると思いモチーフに採用しました。
―― 外側のインスピレーションはどんなものがあるのでしょうか?
人との対話が主ではありますが、機材から偶発的に生まれるノイズから生まれるものもあります。特にシンセサイザーだと意図しない偶然性が生まれることもあるので、そこから刺激を受けますね。
創造性とは「頑張って何かを生み出す」というより、自分の感受性を研ぎ澄まして、流れ込んでくるものを結晶化していく感覚です。私はよく自分の活動を説明するときに「音の結晶化」という言葉を使っています。目に見えないものに少しずつ輪郭づけて、音として結晶化させていく。そう考えると、ジュエリーと音楽って、とても似ているような気がしますよね。結晶化の作業は時間もかかるし、エネルギーもとっても使いますが、その循環こそが創造性なのかなと考えています。

―― 精力的に活動されている鶴田さんですが、その原動力はどこから来ているのでしょうか?
「自分との戦い」ですね。常に、昨日の自分より少しでもパワーアップしていたいという気持ちが根底にあります。音楽はとても時間がかかるものなので、常に“限られた時間”を意識していて、『人生のなかであと何曲聴けるだろう』『あと何回ライブに行けるんだろう』なんて考えることもあるんです。そう思うと、今音楽を作れる時間がすごく幸せに感じられてきます。
それに私は飽き性なところもあって、いろんなことにチャレンジしていたいタイプなんです。一人での制作に集中する時間と、外に出て現場で得る刺激のバランスが、結果的に次の創作のエネルギーになるというか。時間と向き合いながら、新しいことに挑む姿勢そのものが、自分の創造性を広げ、日々の活動のエネルギーになっていると感じます。


―― 今後の展望について教えてください。
直近では、9月に新しいEPをリリースする予定です。そして10月には、屋外フェスティバルへの出演も決まっています。もう少し未来の展望でいうと、テクノロジーの発展によって音楽のあり方や聴かれ方、価値観そのものは今後も大きく変化していくのだろうと感じています。技術が進化する中で、「音楽が人の感情にどう問いかけるのか?」という本質的な価値が、これまで以上に問われる時代になっていくのではないでしょうか。
どんなテクノロジーも最初は、多少の違和感や拒否反応を伴うものですよね。バイナルレコードが普及した時に「家で聴けるならコンサートに行く必要ないじゃん」と言われたり。でも実際は、家で音楽が聴けるようになったからこそ、ライブで音を“体験する”ことの価値がより一層際立つようになりました。音楽との関わり方は、いつの時代も変化してきました。だからこそ、これからどのように変わっていくのか、そして私たちはテクノロジーとどう向き合い、どう寄り添っていけるのか——それが私にとってはとても興味深いテーマですし、楽しみでもあるんです。
―― 今日は本当にありがとうございました。お話を通して、鶴田さんの音楽がどのように作られているのかを知ることができて、あらためて“人の心に寄り添い、そっと背中を押す音楽”だと感じました。
そうだったら、嬉しいですね。音楽もジュエリーと同じように、記憶や感情と深く結びつきやすいものだと思うんです。生活必需品ではないけれど、その人だけの時間や物語を、そっと彩ってくれるような存在なんじゃないかなと。
私が音楽を通して届けたいのは、その人が本来持っている「輝き」を引き出すような時間や瞬間。そして、そのときめきを忘れずにいられるような、そんなささやかな支えのようなものです。
プラチナ・ジュエリーが人に自信や喜びを与えるように、音楽にも「お守り」のような力があると思っています。人間は昔から音に対して本能的に反応する生きものだと思うんですよね。たとえばお祭りに行けば、自然と音に合わせて体が動くような、あの感覚。きっと私たちの中にあるリズム感や情動に、直接問いかけてくるものがあるのだと思います。
実際、音楽は何万年も前から存在していて、まだ人類が狩りをしていたような時代にも、狩りのためではなく“楽しむ”ために骨で笛を作っていたという記録があるそうです。娯楽としての音楽は、きっと昔から人の心に癒しや楽しさを与えてきたもの。音楽が、誰かの記憶をよみがえらせたり、心をそっと軽くしたり、日々をほんの少しでも豊かにするきっかけになれたら、それはとても幸せなことです。

アメリカ・ボストンの名門バークリー音楽院の音楽療法科と音楽制作・デザイン科をそれぞれ首席で卒業し、オーディオビジュアル・パフォーマンス、ファッションショー、サウンドインスタレーションなど多岐にわたる領域で活動する音楽家。幻想的なメロディーと力強いビートを融合させた独自のサウンドは、東京を拠点にしながらも、世界中のリスナーに深く響いている。Ableton、Audio-Technica、資生堂など国内外のブランドへの楽曲提供やコラボレーションも展開。教育者としても精力的に活動。国内外の大学や専門学校、母校バークリー音楽大学と連携し、次世代アーティストの育成に取り組んでいる。音楽業界におけるジェンダー平等の推進にも注力。Billboard Musicでの発信や、2023年のForbes JAPAN「世界を救う希望100人」特集での表紙起用など、アクティビズムの視点からも注目を集める存在である鶴田は、革新と共鳴を軸に、新たな音の未来を切り拓き続けている。

着用ジュエリー / ブレスレット IJIMA ピアス&リング GINZA TANAKA ネックレス Hello me, Platinum ピンキーリング&イヤカフ PLATINUM WOMEN アイコンモデル
※2025年7月取材
