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2024.3.5
歴史に名を残す数々のロイヤルジュエリーを彩ってきたスピネル。長年ルビーやサファイアと混同されていましたが、正体が分かってからも変わらずに王族たちに愛されてきた、少し変わった歴史をもっています。
近年はその性質や希少性から日本でも人気が高まり、新誕生石にも選定されました。ここではスピネルの特徴や歴史、石言葉から、人気の理由を紐解いていきます。
スピネルはマグネシウムとアルミニウムからなる酸化物鉱物の一種です。赤色が有名ですが、ピンク、ブルー、パープルと豊富なカラーバリエーションがあります。
屈折率が高いため、研磨することで美しい輝きを楽しめること、耐久性が高く内包物も少ないことから、古くからジュエリーとして親しまれてきました。
大粒で内包物が少なく、色が鮮やかなものは希少性が高く、価値も上がります。
スピネルの名前の由来は、ラテン語で「小さな棘」を意味する「スピネッラ」。八面体の結晶が美しく、尖った部分があることからこの名がつけられました。
和名でも結晶の形にちなんだ尖晶石(せんしょうせき)という名で呼ばれています。
スピネルの石言葉は「成功」「情熱」「勝利」。ポジティブな石言葉からもわかるように、エネルギーを活性化させ、自己実現を後押ししてくれる石です。
前向きさはもちろん、成功しても奢らない謙虚さを喚起してくれるため、仕事面で成功を収めたいという方にもってこいの石です。
スピネルの本来の色は無色ですが、クロムや鉄、亜鉛が含まれることで、赤や紫、青に発色します。ここでは特に人気の色をその魅力とともに紹介していきます。
スピネルといえばレッドスピネルを連想する方が多い、最も有名な種類です。ルビーに似た鮮やかな赤色を持ち、ルビーの産出地でもあるミャンマーのモゴックで発見されたことから、長年ルビーと混同されてきました。
価格はルビーよりも安価ですが、美しい赤色のスピネルはルビーよりも希少性が高くなります。
ブラックスピネルはその名のとおり黒色のスピネルです。天然の黒色の宝石は珍しく、ブラックダイヤモンドにも似たマットな輝きと、妖艶な雰囲気で近年人気があります。
アヤナスピネルはホットピンクのスピネルです。希少性と愛らしい色合いから、女性に高い人気を誇ります。
2007年にタンザニアのマヘンゲ鉱山で発見された比較的新しい石で、スワヒリ語で「美しい花」という意味がある「アヤナ」と名づけられました。
パープルスピネルは紫色のスピネルです。絶妙な色合いが魅力で、淡い紫の「ラベンダースピネル」、すみれの花のような青みを帯びた紫色の「バイオレットスピネル」と、色合いによって呼び名も異なります。
他のスピネルと異なり、淡く優しい色合いの石が人気です。
スピネルは8月の誕生石です。
もともと8月の誕生石はペリドットとサードオニキスの2つでしたが、2021年12月の誕生石の改訂によってスピネルが新たに加えられました。
もともと誕生石は旧約聖書に載っている12の宝石がもとになり、西洋占星術に取り込まれて現在の形になりました。
誕生石が複数あるのは、その国の人々がより親しみやすいように、関心を持ってもらえるようにと、国によって宝石を変えたり、増やしたりしているためです。
日本でも今回の改訂で新たに10種類の誕生石が追加されました。
ここからは8月のほかの誕生石も少しだけ紹介していきましょう。
ペリドットは夏の木々を感じさせる、爽やかなイエローグリーンの宝石です。
エジプトでは「太陽の宝石」として、ファラオの王冠や装飾に使用されてきた歴史があります。「夫婦の愛」という石言葉があり、色欲をなだめ、夫婦円満へ導いてくれると言われています。
ペリドットについて詳しく見る
サードオニキスは赤やオレンジの地色に、美しい縞模様を宿した宝石です。
硬度が高く、古くからカメオや彫刻に加工され愛されてきました。石言葉は「夫婦の幸福」で、邪な考えから持ち主を護り、夫婦や恋人関係に安定をもたらすと考えられています。
サードオニキスについて詳しく見る
最古のスピネルは紀元前100年と言われていますが、多くが採掘されるようになったのは古代から。東南アジアの鉱山では大きなスピネルがいくつも発掘され、王族や貴族に献上されました。
この頃からレッドスピネルはルビーであると考えられていたため、イングランド王の皇太子エドワード黒太子に贈られた王冠や、ロシアのエカチェリーナ2世の帝冠、エリザベス2世のネックレスに、ルビーと称して大粒のスピネルが使われていました。
正しく区別されるようになったのは16世紀から19世紀頃。科学者や鉱物学者、宝石学者によって、ルビーではなくスピネルであることが発表され、人々に認知されるようになりました。
しかし、その後も変わらず「黒太子のルビー」「ティムール・ルビー」のように、ルビーの名称が使われ、ルビーと変わらない価値があるものとして大切にされてきました。
スピネルの産地は少なく、ミャンマー、スリランカ、マダガスカル、タンザニアの一部の地域でのみ産出されます。
タンザニアのキリマンジャロ地方は2000年代に入ってから良質なスピネルが発見され、近年注目されている産地です。
スリランカではキャッツアイやカラーチェンジ、スタースピネルといった珍しいスピネルが多く産出されています。
加熱処理をしたものが多いルビーと異なり、スピネルは天然の色味が魅力です。そんなスピネルの色を楽しむジュエリーには、宝石そのものの色の邪魔をしないプラチナがおすすめ。
硬度が高く、安定性や耐久性にも優れたスピネルは、同じく安定性に優れ、美しい輝きが続くプラチナと合わせることで、長く愛せる一生モノのジュエリーに。デザインや色も豊富なため、自分らしい色石ジュエリーを探している方にも最適です。
スピネルのモース硬度は8。ダイヤモンド、サファイアに次ぐ硬さがあります。
水にも強いため比較的扱いやすく、普段のお手入れはやわらかい布で拭くだけでOKです。皮脂汚れなど宝石のくもりが気になってきたら、中性洗剤を溶かしいれたぬるま湯に浸し、やわらかいブラシなどで汚れを落とします。
しっかり水気を拭き取り乾燥させてから、他の宝石と分けてしまうようにしましょう。
ロイヤルジュエリーとして王族に献上されてきた、華々しい歴史を持つスピネル。ルビーではないと発覚してからも変わらず愛されてきたのには、人々がスピネルの本質に美しさを見出していたからに違いありません。ぜひジュエリーに取り入れて、その美しさを間近で堪能してくださいね。
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