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2024.2.1
2025.5.8
青みを帯びた紫色が美しく、その色合いから連想される可憐な花の名がつけられたアイオライト。ミステリアスな特性を持ち、人々を魅了してきた宝石であるアイオライトは、3月の新誕生石に加わったことでさらに注目を集めています。
そんなアイオライトは、果たしてどのような性質があり、どのような歴史を辿ってきたのでしょうか?宝石が持つ特徴や石言葉、その歴史や伝説などから、その魅力をひも解いていきます。
まずはアイオライトとはどんな宝石なのか、その特徴を見ていきましょう。
アイオライトは、コーディエライトという鉱物の一種です。コーディエライトの中でも宝石質の濃紫青色のものがアイオライトと呼ばれており、スミレの花のような青みを帯びた紫色が特徴的な宝石です。
アイオライトは、熱に弱く加熱加工ができないという性質から、石本来の色を楽しむことができるのも魅力のひとつだと言われています。
自然のままの姿ながら内包物(インクルージョン)が比較的少ないことが多いのも特徴ですが、中にはインクルージョンによって猫の目のように見える「キャッツアイ効果」やインクルージョンが光を反射してキラキラと瞬く「アベンチュレッセンス」などの特殊な効果が見られることもあります。
アイオライトの産地はスリランカ、インド、カナダ、ミャンマー、マダガスカルなど。とくにマダガスカル産は発色が良く、上質なものは透明度も高いです。
インド産も有名でサイズが大きく、光を当てると星の形が浮かび上がるスターアイオライトが採れることもあります。
アイオライトの名前の由来は、その色にあります。
ギリシャ語で青紫を意味するios(イオス)と、石を意味するlithos(リソス)が組み合わさったものだといわれています。
ブルーサファイアに似た色合いで川の砂利の中から見つかることから、「ウォーターサファイア」という別名もあります。
和名は「菫青石(きんせいせき)」。
その美しい色合いからイメージされる日本でも馴染み深い花、スミレ(菫)の名が冠されています。
アイオライトの特性であり、最大の魅力とされるのが、その多色性。
多色性とは、見る角度によって色が変わる性質のことを指します。これはアイオライト結晶の方向によって、光の吸収の仕方が異なるために起きる現象です。
青紫のアイオライトが灰黄、淡青色へ、さらに角度を変えると無色へと変わっていく様子はまさに神秘的。
色が似たブルーサファイアの鑑別では、多色性のあるなしでアイオライトと判別されます。
また、スミレ色だけではなく様々なカラーのものが見られることもあり、そのカラーによっても異なる呼び名が付けられています。
ホワイト・コーディエライトは、ごく稀に産出される無色透明なアイオライトです。「ホワイト・アイオライト」と呼ばれることもあります。
透明度が高く、カラーレスであればあるほど、希少で価値が高いとされています。
角度によって赤色に輝くブラッドショット・アイオライトは、別名「アイオライト・アベンチュリン」とも呼ばれています。
アベンチュリンとは角度を変えることでインクルージョンが砂金のようにキラキラと輝きを見せる効果のことで、多数含まれるレピドクロサイトやヘマタイトがアベンチュリンにより赤く充血したように輝くことから、「充血した」という意味を持つ「ブラッドショット」の名が付けられています。
こちらも良質なものは市場に出回りにくく希少なため、高い人気がありますね。
アイオライトは歴史の古い宝石で、古代ギリシャやローマ時代から、神聖な石として儀式や装飾品に使用されていました。
ローマ帝国においては洞察力を高めると信じられ、貴族たちがこぞって身に着けていたと言われています。
そんなアイオライトが宝石として注目を集めるようになったのは、近代になってから。
19世紀にヨーロッパのジュエリー市場で珍重され始めたアイオライトは、20世紀には加工技術の向上もあり、その多色性を活かしたデザインのジュエリーが多く生まれるようになります。
そんな歴史があり、現在でも、ファッションジュエリーやパワーストーンに用いられる宝石として愛されているのですね。
アイオライトの長い歴史の中で残されている逸話が、中世ヨーロッパでバイキングの船乗りたちにとって、航海中の無事を祈願するお守りとして持参されていたとされるアイオライトが、大海原への船出の際に欠かせないコンパスのような役割も果たしていたというもの。
磁気コンパスがなかった当時、バイキングたちは曇りの日には「太陽の石」と名付けられた石を使って太陽の位置を確かめていたという伝説が残されています。
この石が、太陽の位置を確認するフィルター代わりに多色性を活用できるアイオライトだったのではないかと言われているのです。
アイオライトの石言葉は「道を示す」「貞操」「誠実」「愛を貫く」などです。
「誠実」「貞操」は、和名にも冠されるスミレの花言葉とも重なっていますね。
「道を示す」という石言葉通り、進むべき道に迷った時の道しるべとなる「ビジョンの石」とも呼ばれており、内なる眼を開かせ、直感力を高めてくれると考えられています。
また、愛を貫くという意味から、古くのヨーロッパでは、結婚する娘の幸せな生活を願ってアイオライトを贈るという風習があったとされています。
アイオライトは3月の誕生石のひとつです。
全国宝石卸商協同組合が63年ぶりに行った2021年12月の誕生石の改訂で、新誕生石として新たに仲間入りしました。
アイオライトの鉱物名であるコーディエライトの由来となったフランスの鉱物学者、ルイ・コルディエの誕生月が3月だったことから、3月の誕生石に選定されました。
3月の誕生石にはほかにも、ブラッドストーン、珊瑚、アクアマリンがあります。なぜひとつの月に複数の誕生石があるのでしょうか?
誕生石はそもそも、旧約聖書に出てくるイスラエルの祭司長の胸当てにはめ込まれた12種類の宝石からはじまり、その後西洋占星術に取り入れられ、現在の誕生石が作られました。
天体の位置を示す「黄道十二宮」に12の宝石が配され、天頂にある星座を象徴する宝石の力がもっとも強くなると信じられていたことが由来になったといわれています。
その後誕生石の風習はさまざまな国に渡り、国によって宝石が変わったり、増えたりしながら、多くの人に親しまれています。
宝石が複数あるのも、選択肢を増やすことで宝石への関心を高めてもらいたいという願いからです。気負うことなく、いいな、好きだなと感じた宝石を守護石として迎えてあげてください。
誕生石一覧はこちら
ここからは3月のほかの誕生石も少しだけ紹介していきましょう。
透き通るような淡いブルーが、海を思わせるアクアマリン。
夜の闇の中でもわずかな光を受けて煌めく姿から「人魚石」や「夜の女王」と呼ばれ、中世ヨーロッパの夜会では女性たちがこぞって身に着けていたといわれています。
贈った人も贈られた人も幸せになれるという言い伝えから「天使の石」とも呼ばれています。
アクアマリンについて詳しく見る
真珠と同じ有機質の宝石で、海の生き物の骨格を加工してできたものが珊瑚(コーラル)です。
日本も、世界から認められている美しい宝石珊瑚の産地のひとつで、高知県沖や日本近海の小笠原列島や五島列島、奄美、沖縄、宮古島周辺で採取されています。
長い年月をかけて育つその性質から強い生命力を象徴し、厄災や病魔を払うお守りとしても愛されています。
珊瑚について詳しく見る
深いブルーやグリーンの地色に、まるで血が飛び散ったような斑点模様がミステリアスなブラッドストーン。ブラッドストーンも、今回の改定で新たに加えられた誕生石です。
十字架にかけられたキリストの血が飛び散って生まれたという逸話から、キリストの血を浴びた聖なる石として崇められていました。
強力な浄化作用を持ち、負を跳ね除け、勇気と心身の強さをもたらしてくれるといわれています。
ブラッドストーンについて詳しく見る
石言葉にもあるように、進むべき道を照らしてくれるアイオライト。
そんなパワーは恋愛や結婚においても同様で、本当の愛を見つけられるようサポートしてくれると考えられています。
また、アイオライトは直感力や洞察力を高めてくれる、眠っている才能を開花させてくれるとも言われており、瞑想の際に身に着けるという人も。不安を感じている、考えすぎてしまうというときにも、心を安定させ、思考をほぐしてくれるでしょう。
アイオライトのパワーをより高めたいという時は、相性の良い宝石を組み合わせて身に着けるのもおすすめです。
その繊細なカラーも楽しめるアイオライトと相性が良いとされる宝石を、いくつかご紹介します。
アイオライトと同様3月の誕生石に数えられるアクアマリンは、「自由」「幸福」などの石言葉を持っています。アイオライトと組み合わせることで心を癒す効果や恋愛運を向上する効果をさらに高められるとされています。
アメジストは、アイオライトと同じように直感力を高めるパワーがあるとされており、アイオライトと組み合わせることで、夢や目標により近づくサポートをしてくれるでしょう。
また、「愛の守護石」としても人気があり、恋人や夫婦など、人と人との愛の絆を深めるパワーもあるとされています。
ムーンストーンは古来では予知や占いなどにも用いられていたと言われており、アイオライトのように「進むべき道を示してくれる」パワーがあると信じられています。
アイオライトと組み合わせることで、自己成長を促し、自信が進むべき道を明るく示してくれるかもしれません。
アイオライトはモース硬度7.0~7.5と水晶と同等の硬さがありますが、熱に弱く、高温や急激な温度変化を伴う環境下では割れてしまうことがあります。
また一方向に割れやすい性質があるため、強い衝撃にも注意が必要です。ジュエリーはぶつけるリスクが少ないネックレスやイヤリングで楽しむのがおすすめ。
普段のお手入れは外した後、柔らかい布で拭く程度で大丈夫です。水には強いため、汚れや曇りが気になった場合は中性洗剤を溶かしたぬるま湯に浸し、柔らかい歯ブラシで汚れを落としてください。
洗浄後は柔らかい布で水分を拭き取り、しっかりと乾かしてからジュエリーボックスなどに単体で保管しましょう。
アイオライトの色合いや変化をいつも楽しみたいという人は、ファッションに合わせて楽しめるジュエリーを探してみてはいかがでしょうか。
ジュエリーを選ぶ際に気を付けたいのは地金の色です。
アイオライトのジュエリーには、絶妙な色合いを引き立ててくれるプラチナの地金がおすすめ。 プラチナの落ち着いた白色と控えめな輝きは、繊細な色の変化を楽しみたいアイオライトに最適です。高貴な白色はアイオライトのジュエリーに上質感と、知的な印象を与えてくれるでしょう。
また、プラチナは安定した性質により変色・変質の心配がないのもポイントです。
日常的に身に着けるジュエリーでも、変質を気にすることなく永く大切に楽しむことができます。
航海の道しるべとして、悩める人々を進むべき方向へ導いてきたという伝説をもつアイオライト。壁にぶつかった時や進むべき道に迷った時、お守りとして身に着けてみれば、何かヒントをもらえるかもしれません。
誕生石にも選ばれるアイオライトは、誕生日のプレゼントなど、大切な方の幸せを祈る贈り物にもおすすめです。ヨーロッパの風習に倣い、結婚のお祝いとして贈るのも素敵ですね。
多色性をもつアイオライトのように、日々がさまざまな煌めきで彩られますように。
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